正しい健康食品情報

正しい知識で食生活を改善し、生活習慣病を予防しましょう

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所から「健康食品」の安全性・有効性情報のページが公開されています。
健康食品に関しては多くの間違った情報が飛び交っていますが、食材を購入する前に参照し正しい知識で食生活を改善されることをお奨めします。
引用される学術文献はPubMed科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)で検索し閲覧することができます。

ご質問:玄米は本当に体に良いのでしょうか?

回答:白米と玄米の違いは米糠の成分を含むか、含まないかの違いです。
玄米から糠を抜き、胚芽を全て取ってしまったものが精白米です。外皮、胚芽、糠部分には多くの微量栄養素が含まれており、玄米は栄養豊富な食品といえます。1910年に鈴木梅太郎はコメ糠から脚気(かっけ)の治療に有効な微量成分アベリ酸(後にコメの学名オリザ・サティバにちなんでオリザニンと命名・現在はビタミンB1と呼ばれている)を発見しています。ビタミンB1は精白米の4倍以上、食物繊維は5倍、カルシウムは2.5倍、ビタミンB2は2倍含みます。
玄米の組成は外側から果皮、種皮、糊粉層、胚乳及び粒基部にある胚芽からなっていますが、精白米を作る場合、玄米重量のほぼ8〜10%が糠として分離されます。
米糠はオレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸、その他の脂溶性成分を多く含むため栄養学的には優れていますが、不飽和脂肪酸は酸化されやすく、過酸化物の摂取は動物にとって有害です。
リノール酸は最近、脳・心臓血管系疾患やアレルギー疾患の危険因子とされるようになり、リノール酸に代わりα−リノレン酸の摂取が推奨されるようになりました。
米糠はフィチン酸(Phytic Acid、ミオイノシトール6燐酸)を含むため、玄米の効用はフィチン酸の体内の有害物排泄作用によるとする説が多いようですが、フィチン酸は食品中の種々のミネラル-カルシウム、鉄、亜鉛等人の健康にとって必要な金属と結合し、難溶性の塩を作って吸収を妨げ、生体利用率を低下させます。フィチン酸の過剰摂取は腸でのカルシウム吸収を阻害し、クル病の原因になるとする説もあります。
フィチンを多く含む食品は殆どの場合かなりの量の繊維を含み、繊維も又ミネラルの生物学的利用能を低下させます。糠の多量摂取はミネラルの吸収にとっては悪影響を及ぼすことは間違いありません。
しかし、食品素材としての食物繊維には整腸作用、血糖値上昇抑制作用、コレステロール低下作用が広く認められており、食物繊維を含む特定保健用食品が数多く登場しています。
玄米はフィチンの効用というより、食物繊維を含むため悪玉コレステロールなど現代人の栄養過多食物の吸収を抑制してくれる効用が大きいのではないでしょうか?玄米の微量栄養素加えて、肥満、心臓血管疾患、糖尿病など生活習慣病の予防に、玄米の食物繊維が有効に働くと考えられます。
しかし、玄米だけを多く食べることは避け、野菜も含めたバランスの良い食事を摂ることを心がけましょう。
また、脂溶性の農薬は米糠の部分に蓄積されますので、玄米を食べる場合は無農薬で栽培した玄米が推奨されます。


ご質問:話題の「ノニ・ジュース」について教えて下さい。

回答:米国モリンダ社のタヒチアン・ノニが有名ですね!
ノニとは南太平洋のポリネシアの島々、タヒチ、ハワイ、マレーシアなどで栽培されている学名モリンダ・シトリフォリア(Morinda Citrifolia)という熱帯植物の名前です。ジュースはその果実からつくられます。
最近沖縄でも栽培されるようになりました。同属植物の成分については多くの研究がなされており、世界最大の医学データベースMedlineで「Morinda」をキーワードに検索すると80件以上ヒットしますから、多くの人が関心を持ち研究がなされていることは確かです。
問題は臨床データが殆ど無いことです。有効成分とされるゼロニン(Xeronine)、プロゼロニン(Proxeronine)についても殆ど公表文献は存在せず、臨床データがないまま、くちコミで販売が促進されていることが問題でしょう。
ノニ・ジュースにはカリウムを含むため血圧降下作用を期待することはできますが、カリウム過剰で腎不全を起こしたとする文献もあります。
モリンダ社関連業者に対して、過剰な宣伝を慎むよう米国食品医薬品局(FDA)が警告を出しています。

http://www.quackwatch.org/04ConsumerEducation/News/noni.html参照

わが国では健康食品の病気に対する効用を謳うことは薬事法違反となるため、MLM(Multi-Layer-Marketing)による健康食品のくちコミ販売が多用されています。MLMによるくちコミ販売自体は悪いことではありませんが、正しい知識にもとづかない販売行為には警戒が必要です。


ご質問:シソが花粉症に効くと聞きましたが本当ですか?

回答:シソ(紫蘇)は中国南西部原産の一年生草本のシソ科植物で、シソ科植物にはハッカ、ラベンダー、タイムなどの芳香性を有するハーブが含まれ、古くから食用または薬用として栽培されてきました。
シソには赤ジソと青ジソがあり、赤ジソはポリフェノール系アントシアニン色素を含み、青ジソは色素を含みません。
シソの香りは精油成分ペリラアルデヒドによるものですが、最近の研究からシソが含むポリフェノールに抗アレルギー作用があることが判り注目されています。
抗酸化作用を有するポリフェノール類には炎症にともなって増加する好酸球やヒスタミン遊離を抑制する作用があることが明らかにされつつあり、シソ抽出物をマウスに経口投与した場合の有効成分はルテオリン(Luteolin)と報告されています。(Biol Pharm Bull 2002;25(9):1197)
シソにはルテオリン以外にもポリフェノール系のプロシアニジンB1(ProcyanidineB1)が多く含まれることが判っています。
ポリフェノール類が抗アレルギー作用の有効本体であれば、シソ以外の植物成分、カテキン(Cathechin)、ルチン(Rutin)、フラバノール(Flavanols)などにもアレルギー抑制効果が期待されますが、ポリフェノール類の中でトリフェノール類(OH基が3個あるもの)はヒスタミンの遊離を抑制したが、ジフェノール類(OH基が2個のもの)は無効であったとする報告もあり、すべてのポリフェノールに効果を期待することはできないようです。
今までに得られた有効データの殆どが動物モデルまたはIn Vitro(試験管内)試験に基づくもので、人体を対象にした信頼できる臨床データは無いのが現状です。
ポリフェノール類が花粉症に有効か否かの結論を出すのは時期尚早でしょう。


ご質問:新聞やテレビで見かけるKW乳酸菌とは何ですか?

回答:KW乳酸菌はキリンビール(株)が抗アレルギー効果の強い乳酸菌の選抜を目的として、Th1/Th2バランスアッセイ系のスクリーニング試験を行い選抜された乳酸菌Lactobacillus paracasei KW3110の名称です。
ヘルパーT細胞に関する免疫細胞の研究結果から、花粉症などのアレルギー疾患では、生きた菌が感染すると増えるTh1(ヘルパーT細胞1型)が少なくなっており、Th2(ヘルパーT細胞2型)が優位になっていると考えられています。雑菌の少ない清潔な住宅環境がTh2優位の免疫状態をつくっている可能性があります。Th1誘導能活性の強い菌株として選抜されたKW3110株の生菌を投与することにより、Th1を増やしてアレルギーを抑制しようとする試みは、免疫学が教える筋書きに適ったものといえます。
花粉症のボランテイア14名に対してKW3110株ヨーグルトを投与したところ7例でTh1/Th2細胞比の上昇傾向を示したとしています。(第53回日本アレルギー学会要旨集898頁)
Th1/Th2バランス仮説が該当しない事例もあり、自然免疫力の低下を補うために獲得免疫が増強され、アレルギーになるとする仮説も登場しています。

なお最近、腸内フローラ(細菌叢)が制御性T細胞(Treg)の増減に関与しており、クロストリジウム属細菌がつくる酪酸がTregを増やし免疫疾患を軽減させることが判り注目されています。


ご質問:米国ではサプリメント(栄養補助食品)の販売に対する規制は無いのでしょうか?

回答:米国では1994年にサプリメントの啓蒙に関する法律(Dietary Supplement Health and Education Act)を成立させましたが、日本の薬事法のような法的規制は無く、食品の有害性が立証されない限り販売を禁止しないところが興味深いところです。理由も無く販売を禁止すると、政府といえども損害賠償の責を負うことになるからでしょう。
しかし、最近サプリメントの副作用報告を企業に義務付ける法案(Dietary Supplement Safety Act of 2003)が提出されるなど、米国でも食品の安全性に対する関心が高まっています。
1996年にニューヨークの20歳の学生がエフェドラ配合製品の服用で死亡したことから関心が高まり、ダイエット食品を使用したメジャーリガーが死亡する事件が発生するなどダイエット素材として人気のあったエフェドラ配合食品の有害性が明らかになり、販売禁止の決定が下されました。

2004年4月14日には有害ハーブ成分をリストアップし、警告を出しています。アリストロキア酸(絶対的に危険)、コンフリー(危険度大)、ロベリア(やや危険)などの有害性が指摘されていますが、販売は禁止していません。


ご質問:ラクトフェリンがC型肝炎に有効と聞きましたが本当でしょうか?

回答:ラクトフェリン(Lactoferrin)は数ある健康食品の素材の中では信用してよい成分の一つかも知れません。
ラクトフェリンは母乳、牛乳中の鉄と結合しやすい糖蛋白成分で、抗菌作用を有することが知られていましたが、C型肝炎に有効とする研究報告が出て注目されています。
ラクトフェリンはC型肝炎ウイルスのエンベロープ蛋白と結合することによって肝細胞への感染を防ぎウイルス量を低下させるのではないかと考えられており、免疫アジュバントとしての効果も期待されています。
慢性C型肝炎患者にラクトフェリンを経口投与で600mg/日、12ヶ月間連用した場合の無作為臨床試験の結果が発表されています。投与後3箇月間インターロイキン18(IL−18)の濃度が上昇し、IL−18の増加とともに末梢血中のインターフェロンγとTh1細胞が増加したが、その後効果は減少したとしていますから、ラクトフェリンは経口投与開始後3ヶ月間はTh1サイトカインが優位の環境が保たれC型肝炎ウイルスの除去に効果が期待できるが、長期間に亙って効果を持続させることは難しいということになります。(Hepatol.Res.,2003,Mar.;25(3):226-233)
二重盲検無作為化による臨床試験ではプラセボ群と有意差がなかったとする報告もあります。(第10回日本肝臓学会)

なお、ラクトフェリンにはパンデミックとなった新型コロナウィルス感染症(COVID-19)にも予防・治療効果が期待され、サプリメントのビタミンDにもCOVID-19の予防効果が期待されます。

ラクトフェリンのCOVID-19予防効果

Lactoferrin for the treatment of COVID-19 (Review) - PubMed (nih.gov)

コロナウイルス感染症に於けるビタミンDの役割


ご質問:「にがり」の効果について教えてください。

回答:「にがり」の効果はマグネシウムイオンの作用と考えられます。生体内に存在する各種代謝酵素の活性化にはマグネシウムイオンが必要で、ビタミンB1を含む食材と塩化マグネシウムを含む「にがり」や自然塩を併用するすることにより糖代謝が促進され、抗肥満作用、血糖降下作用が期待できます。但し、「にがり」で豆腐やこんにゃくが凝固するように蛋白質でできた腎臓や肝臓も「にがり」の蛋白質凝固作用の影響を受けますから、「にがり」は取りすぎると腎臓の糸球体に障害を及ぼす可能性があります。
「にがり」を摂取する場合、マグネシウムとカルシウムのバランスが重要です。成人では1日に必要なカルシウム600mgに対して、マグネシウムは300mg(以下)が必要とされています。
話題の海洋深層水、自然塩を摂取する場合も、マグネシウムを含むため経口摂取する場合は取りすぎないよう注意する必要があります。
自然食品、天然物なら安全ということはありません。塩、砂糖のようなものでも取りすぎると「毒」になるのです。


ご質問:リノール酸は悪玉と聞きましたが、本当ですか?

回答:本当です。「リノール酸はコレステロール値を下げ、心臓病を予防する」とされていましたが、リノール酸の摂取を増やすことは、長期的に効果が無いばかりか、むしろ心疾患死亡率を上げてしまうことが明らかになりました。
このページ初頭の玄米に関する質問の回答でも「リノール酸は、脳・心臓血管系疾患やアレルギー疾患の危険因子」と指摘していますが、これはグリーンランド先住民の疫学から始まった一連の研究で、リノール酸の摂取が多く、α−リノレン酸が少ないと膜脂質中のアラキドン酸が多くなり、血液粘度が上がり、赤血球変型能は下がり、血栓や炎症が起こりやすくなることが判ったのです。
α−リノレン酸やエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などω−3系(脂肪酸の炭素が繋がる部分の先端から3つ目に2重結合がある)脂肪酸は、リノール酸、γ−リノレン酸(ω−6系脂肪酸)とは逆に心疾患予防に有効であることが、臨床データからも立証されています。
日本人のリノール酸摂取量は40年間で2.5倍にもなり、これがアトピー性皮膚炎を増加させた原因とする説もあります。
但し、リノール酸は体内でプロスタグランジンやロイコトリエンなどの生理活性分子に変換され、欠乏すると健康を害する必須脂肪酸です。リノール酸の過剰摂取が良くないのです。
米ぬか油、綿実油、ごま油、大豆油などはリノール酸を多く含むので、α−リノレン酸を多く含む「なたね油」や「しそ油」、「荏胡麻油」を同時に摂取して、リノール酸の摂取比率を下げるのが良いでしょう。因みに「荏胡麻」はゴマ科の植物ではなく、シソ科の一年草植物です。
なお、最近欧米ではトランス脂肪酸(水添植物油)の摂取を制限する施策が急速に進んでいます。「トランス脂肪酸はコレステロール値を上げ、心疾患を促進する」とされていますが、水添植物油にはトランス脂肪酸以外の微量有害因子が存在するとする意見もあります。動物性脂肪は誤った栄養指針により忌避されてきましたが、有害因子を含まない利点を再評価すべきかも知れません。(ファルマシア43巻4号332頁)


ご質問:コエンザイムQ10(CoQ10)が爆発的に売れているそうですが、何に効くのでしょうか?

回答:CoQ10は細胞内のミトコンドリアでATP(アデノシン3燐酸)の産生に関与する補酵素です。心筋組織の機能障害に起因するうつ血性心不全の症状緩和に有効な臨床データが得られていますが、CoQ10を単独で摂取する場合、有用であるという証拠は無いとの指摘もあります。重篤な副作用は報告されていませんが、脂溶性のため過剰に摂取することは避けたほうが良いでしょう。
各種のビタミン不足と同様、補酵素の不足のため障害がでている患者には効果が期待できますが、CoQ10だけを過剰に摂取する意義は少ないのです。
一般に「スタチン(Statin)剤」と呼ばれているコレステロール低下薬はメバロン酸合成系に作用しCoQ10の生合成を阻害するので、「スタチン剤」を常用しCoQ10不足で筋障害を起こしている高脂血症の患者がCoQ10をサプリメントとして摂取することは有益と考えられます。


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